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先っぽだけ入れさせて

 一途な想いが狂気へと変貌することは珍しいことではない。そして叶えられぬ想いも狂気へと変貌することは珍しいことではない。しかし、叶えられた想いが狂気へと変貌することは考えがたいものだ。
 真壁一太は一途な男だ。一途過ぎて一度はまり込むと他のことが見えなくなるくらい一途だ。大好きな人のことを考えて雨の日も傘を忘れ、物思いにふけるあまり目の前のバスに乗るのでさえ忘れるくらいなのだ。一太は自分の想いを「純心」と言うが、一太以外のものは「馬鹿」と言う。
 一太の純心さは数年続く。想いが終わる時は「諦める」のではなく、「人以外のものに興味を持つ」時だ。例えば異性を愛した後に急にマラソンを始める。その後マラソンを止めて異性を好きになり、その後骨董品、という具合だ。他人から見ると「人に飽きたか集中力が途切れた」ぐらいにしか見えないのだが、一太の意識の中では「飽きた」のではなく「好きになりすぎて前のことを忘れた」となっている。
 その一太も世界各国の占い用具を集めることを止めて今は一人の女性を好きになっている。相手は有名私立女子大三年生の夷隅聖子。二十一歳。一太の年齢は三十九なのだから聖子の友達たちにしてみれば「えー?ありえない。キモイよね」で一蹴どころか何度も足蹴にされているようなものだった。
 しかしバスに乗ることすら忘れるような一太。周囲の声など聞こえようはずもない。聖子はそこらの成金とは違い由緒ある家系で育ちがよく、品のない言葉を使う習慣がまったくないので、一太の存在に気がつこうと堂々と古風に手紙をもらおうと「年齢の差もございますし、わたくしのような若竹にも劣る弱齢で浅学の身、あなた様のように立派に社会でご経験をつまれた方のお傍でつまらぬお話申し上げるのもおこがましいことでございますから、なにとぞお釣りあいの取れた、あなた様に相応しい方と人生を歩んでいかれたほうがお幸せかと存じます」と丁寧に返礼するのであった。この手紙の内容を簡略化すると「年が釣り合わないから諦めてくれ。趣味も話も合わない」ということなのだが、一太は意に返さない。
 一太がどこで聖子と知り合ったかというと、私立大学が管理運営している大学構内の大きな公園があり、公園管理運営士である一太は公園内の植物の手入れなどの仕事をしている。そこで仕事中の一太が友人と昼休みに手作り弁当を食べている聖子を見て一目惚れしたのが始まりだった。
 大学が大きな公園の管理するのは珍しいが、それだけ歴史のあるお嬢様学校といっていい。もちろん創立当初からの歴史のある公園だからこそ管理も徹底している。一太の仕事は評価されていた。そして歴史がある有名私立お嬢様学校だけにお金持ちの令嬢ばかりなのだが、聖子は立ち振る舞いだけでも他の女性と違って蘭の花のように栄えて見える。群を抜いていた。
 一目惚れしたのは一太だが最初に声をかけてきたのは聖子だった。花に興味があるようで、一太の手入れしていた花の名前を聞いてきたのだ。花とは違った淡く甘い匂いがして、声のほうへと振り向くと憧れのお嬢様が立っているのだから体中の血管が驚きと喜びにあふれ詰まって心臓が止まるかと思ったほどだった。一太は手入れをしていたルピナスの説明をする。日本名でノボリフジとも言われるルピナスはフジの花を逆さにしたような形をしている。色とりどりのルピナスはジェリービーンズを美しく飾り立てて積み上げたようにも見える。一太はあまりの嬉しさに食事中にワインの薀蓄を長々と話し出すソムリエのように話を止めなかった。
 聖子は一太の話を聞きながらルピナスのそそり立ったような姿をじっと見つめ潤った唇をぽうっと開けて右手の人差し指と中指を下唇に当てて優しくなぞっている。その姿は一太に「そのままルピナスを舐めだすのではないか」と思わせるほどで、いやらしさを思い浮かばせるほどの、とろりとした目つきだった。
 一太も思わず唾をごくりと飲み込み、喉が鳴ったような気持ちになった。いい気分で熱弁をふるっていた一太の背後から聖子を呼ぶ声がして聖子は行ってしまったが、その時の友達の会話が一太を腹立たせた。
「どうしたの聖子。あんな根暗そうな男と話して。呼び止められたの?止めときなよ。あいつ、なんかいつも聖子のことしつこく見つめてて変態なんじゃない?」
 背中で話を聞き、ぐっと握りこぶしを作ったほどだったが、聖子の天使のような言葉に心は飛び立たんばかりであった。
「これだけの美しい庭園を管理なさっている方です。中には栽培方法が難しい植物もありましょうに、見事に咲かせることができるのは、心根がお優しいからに決まっております。ですから悪い方ではないと信じております」
 一太は涙を流して崩れ落ちそうだった。今のセリフを録音して家で何度も聞きたい気持ちになった。もし手を取って今のセリフを言われたら一生我が身を犠牲にしてもいいと思わせるほどだった。破壊力満点。心は完全に陥落した。もう想いを止めることはできなかった。今なら十トン鉄球でも片手で受け止められそうな気分だった。
 それからというもの、寝ても覚めても聖子のことばかりだった。見かけない日や学校のない日は酷く落ち込むほどで、積み重なった想いはついに爆発し、ある日こっそりと聖子の後をつけていってしまった。聖子が入っていった家は大きな家だった。門があり、家まで数十メーターはあろうかと思わせるほどだった。聖子の家が巨大な庭園になっていそうなことは門から見える庭の造り方からして理解できた。
 そうしてしばらく日が経ち、ますます積み重なってくる想いに今度は壁を乗り越えて敷地に入るという危険行為にまで及んだ。思ったより壁が高く、木登りをしてわざわざ乗り越えなければならないほどだった。一途とはいえ完全な不法侵入、ストーカー行為には間違いなかったが、意に返さない。そんな一太が、敷地内で妙なものを見つけた。曇ったガラス張りのハウスだった。中で植物を育てていることはわかったが、随分多湿にするのだなと職業柄気になった。中に入れるのだろうかと入り口を探すと鍵はなく、すんなり入れた。もし誰かに遭遇したら言い訳は通用しないだろうが、一太にしては珍しく好奇心のほうが勝って自分が敷地内に入った目的さえも忘れていた。中は思ったよりも多湿で服が少しずつ湿ってきているのがわかる。花の香りとは別に魚とは違った生臭い臭いまでする。まるで熱帯雨林のジャングルに迷い込んだようだったが、見たこともない植物が栽培されている。せいぜい一太がわかったのは、ウツボカズラ、モウセンゴケ、ハエトリグサぐらいなものだった。
「食虫植物を栽培しているのか……」
 と歩いていくとラフレシアのような大きな花があった。花の中には水らしきものが溜まっていてよく見ると小さな骨まである。
「これもなのか……一体何を捕食するんだ……」
 一太は奇妙な空間に少し恐怖を感じるようになって、敷地内から逃げるようにして帰った。そして気になったことを家に帰って調べだした。夷隅。どこかで聞いたことのある名前だと、一太の脳裏に浮かんだ。夷隅聖子の父親は誰なのか。わかるまで苦労はしなかった。夷隅博志。植物細胞学の世界的な権威だった。代々学者の家系で聖子が通っている女子大の設立当初にいた学生が夷隅博志の曾祖母にあたり、その曾祖母は植物と人間の心理の相関関係を人類で初めて証明した植物神経学の名誉博士だった。
 一太は目の覚める思いだった。普通あまりの格の違いに尻込みしそうなものだが、一太は逆だった。「やはり自分が惚れただけはある」と前向きに捉え、ますます好きになるという始末だった。その夜は関係が前進したわけでもないのに、聖子の素性が多少わかってきて「理解を深めている」と勘違いをし、妄想を始めるのであった。
 由緒ある家系の金持ちの令嬢と恋仲になる、という妄想は男性の妄想の中でもよくあることだが、一太はより具体的だった。前にルピナスの説明をしていた時のなまめかしい聖子の顔を思い浮かべながら自分の雄肉を深々としゃぶらせ、育て上げた公園の花々の中でじっくりと聖子に性技を教えていくというものだった。
 妄想の中で聖子は既に一太を好意的に思っていた。
「このような場所でするのでしょうか。私、初めてで……あの、恥ずかしいです……」
 と公園の中一太に手を引っ張られる聖子は顔を赤らめて目を濡らし背けている。
 聖子は既にこれから起こることを予想していて肌の奥を濡らしていた。瞳は期待と不安に揺れ動きながらも股の奥の潤みを隠せないようにしっとりとしてきている。あまりに強く引っ張るので聖子が足をつまづかせて倒れ掛かってくるところを一太はしっかりと抱きしめる。
「大丈夫かい?聖子」
「ありがとう一太さん。もう、強引なんですから……」
 と言いながらも胸に寄りかかる聖子が顔を一層赤らめているのは伏せた様子でわかる。その顔をぐいっと手で優しくあげて唇を近づけると聖子は「あっ……」と小さな声を漏らしながら潤んだ瞳を閉じる。一太は上品に進めていくつもりはなかった。いきなり舌をねじ込み、聖子の舌を誘い込んで吸い上げる。耐えているのか感じているのか「あっ、あっ」と舌を吸われながらもだえる聖子の胸を鷲づかみにする。
 ブラウスのボタンをはじいていき、ブラのホックを器用に外す。一太が最後に女性と付き合ったのはもう十年以上も前になり、その時は自分で脱がせたわけではなかったので、現実ではうまくできないが、妄想の中ならお手の物だ。
 白い柔肌が零れ落ちる。しっとりと汗ばんだ乳房にはぷくりと腫れ上がったピンク色の突起が見える。硬くなった突起に向かってついばみしゃぶりつく一太は子牛が乳を求めるように荒々しい。舌をべろりべろりと出して突起の周りを舐めまわし、口の中で乳首の硬さを味わうように吸い込んで甘く噛む。まるで水に浮かんだ豆腐に顔を突っ込んで食い散らかすように音を立てて吸っている。そんな品のない貪りかたでも女神のような聖子は淫らな声を上げそうになるのをクッと唇を噛んで我慢している。羞恥が体中を舐めまわしているような気分に快楽の堕落を進入させまいと耐えているようだった。
 一太は自分がしていることで聖子が感じていることを知っていた。ちゅっと吸う力を込めると「あっ」と髪を振り上げる聖子。甘い香りが漂い一太の雄肉は膨張しきる。我慢しきれなくなり聖子を寝かせ、スカートの中からショーツを剥ぎ取る。もうそこまで来た時には「花畑」の設定も「性技を教え込む」という妄想も吹っ飛んでいた。
 聖子の花園からは満開に咲き誇った花畑よりも甘く淡い女の香りがする。一太は喉の渇いた犬のように花園の奥を何度も舐めあげる。既に花園はとろとろになり蜜であふれ返っていた。一心不乱に舐め続ける一太は秘密の味を覚えた淫猥な犬のようだった。じゅるじゅると吸い、漏れてくる液を逃さず舌で救い上げる。
「はぁっ、はあうん、一太さん、そんなに激しくなさらないで、ああうっ……」
 聖子の声に興奮と嬉しさを覚える一太は早く聖子の中に雄肉を突き立てていきたくなった。舐めるのを止めて聖子を見つめると「早く、早く入れてください。一太さん」とせがんでくる。たまらずあてがった雄肉を一気に聖子の中に挿し込んでいく。濡れた花園はするりと雄肉を吸い込み締め付けてくる。その瞬間「あああー」とビブラートな情けない声を上げて射精し、妄想は終わった。最後までするつもりが、あまりの気持ちよさにフライングしてしまったのだ。少しだけ後悔したが、一太は幸せだった。
 次に聖子を見かけることができたのは三日後だった。
「こ、こんにちは」
 と勇気を振り絞って声をかけてみる。三日間、まともに仕事が手につかず、花を見つめながら話しかけるほど重症だった。「あの人花に話しかけてない?気持ち悪いね」という声が何度も背中から上がったのだがまったく届かなかった。天体望遠鏡のような精度で聖子を公園で探していた一太がようやく聖子を見つけることができ、声をかけた時は全身の息を吐き出すようだった。
「あ、こんにちは。ごきげんうるわしゅう」
 とさりげなく微笑みを向けて通り過ぎた。一太はガクリと膝から力が抜けて地に突っ伏してしまいそうだった。現実はこんなものだ。妄想の中では好意的で楽しげな会話が繰り広げられるはずだった。そして「今度一緒にデートでもどうですか」と誘う一太の魅力的な申し出に顔を赤らめながら「私なんかでいいんですか?」と言う聖子を「そんな、僕にとっては世界一の女性とデートできるなんて幸せなんです」というところまでシナリオは出来上がっていたが瞬時に没台本となった。当然その後の「朝までフルコース台本」も没になった。手紙をもらって遠まわしに断られた事実など一太の情熱の前では焼け石に水だった。
 欲求が叶えられなくなると余計に叶えてみたくなるのが人情だ。妄想の中では何度も聖子を抱きしめ結ばれている。一太の性のテクニックの前に聖子の体は熟れきって肉汁を垂らし毎日のようによがっている。
――そのはずが。
 来る日も来る日も肩透かしのように聖子にかわされる。うまく話が繋いでいけず、もどかしい。なんと世知辛い世の中だ、と世の中のすべてにうまくいかないと思うくらい聖子のことでやきもきしていた。
 しかし一太に起死回生の機会がやってくる。聖子を思うあまり大事な書類を作成することを忘れていて遅くまで残っていたが、帰り際公園でカサカサと音が鳴っているのを聞き、近くまで寄ると女性らしき人がエキノプスというライチに棘が鞠状にできたような花をいくつも手折っていた。よく見ると青色だけ手折っている。
「ああ、何をするんだ!」
 と怒鳴りながらなおも手折ろうとする手を掴みあげると聖子だった。
「あ!せ、聖子、じゃなくて夷隅さん?」
 思わず妄想内の癖で名前で呼んでしまいそうになった一太は何故このような酷いことをするのか、あれほど優しそうに見える人が、信じられないような思いだ、と言うと聖子は泣き崩れた。
「この花を見ると思い出すことがあるのです。ですから、辛くて辛くて……」
 それ以上は言葉にならないようですすり泣くだけだった。どれほど深刻な事情なのだろうと気になるところだが、泣いている聖子の前ではたじろぐだけだった。男は惚れた女の涙に弱い。ようやく涙が収まった聖子は一太へ憂いをおびた瞳で見つめてくる。
「あの、このこと、どうかご内密にしていただけませんでしょうか」
 と聖子が口走った時、一太の中に邪悪な思念がよぎった。
「じ、じ、じ、じゃあ……」
 緊張のあまりどもってしまった一太は手に汗をかきだしている。
「はい」としおやかに胸の前で両手を重ね言葉を待つ聖子の姿にすらそそられる。
「ぼ、僕と、せ、セックスして」
「お断りさせていただきます」
 間髪入れず放たれた拒否という強靭な矢は一太の胸を貫き、湧き上がっていたはずの一太の邪悪な思念を一撃の下に葬り去った。一太は悪い意思を貫徹しきれるほど強い心を持ってはいなかった。一太の混乱は瞬時にして極限に達した。ついに妄想が実現できる機会がすぐ目の前にあるのにも関わらずみすみす逃すのか、という思いばかりが焦りとなって急き立てている。妄想の中濡れた唇で何度勃起した雄肉がしゃぶられたことか。妄想の中で何度濡れそぼった秘肉の奥まで雄肉を突きたてて精液をぶちまけたことか。しかし目の前の現実はこんなにも切ないじゃないか。一太は泣きそうなほどであった。
「どうしても?」
 ともう一度念を押して聞いてみると「申し訳ございません」と同じように拒否される。もう「相手の弱みに付け込んでセックスする」という目論見は吹っ飛んでいる。
「お願いします」
 今度は頭を下げてみたが結果は同じ。もはやこうなると歯止めがつかない。一太は聖子に手を合わせ、土下座をし始めた。
「お願いします。セックスしたいです。夷隅さんと一度でも、一回だけでいいんです。全部入れなくてもいいです。そうだ、先っぽだけ、先っぽだけでいいから、ほんと、ちょっとだけ、それ以上は何もしません。中まで入れません。だから、お願いします。お願いします」
 身も蓋もない言いように聖子は困り果てていた。土下座をしながら地獄の王の前で命乞いをするかのような必死ぶりの一太を眺めていると哀れにすらなってくる。聖子はため息をひとつつき「わかりました。先っぽだけというお約束なら。でも本当にそれだけです。それ以上はお受けできません」と一太にとって信じられないような言葉を一太の前に置いたのだった。
「え?本当?ホントに?え?ホント?」
 まるで前々から欲しかったおもちゃをプレゼントされた子供のような姿の一太に「ただし」と付け加えた。
「条件があります。場所は私のお屋敷にしていただきたいのです。万が一のことがあっても困りますから」
「はい。はい。もちろんです。どこへでも行きます」とはしゃぐ一太の妄想はビックバンを起こした。お屋敷に呼ばれるということは、公認の中になるということ。公認の中になったらデートもセックスもし放題。そのうち「娘と結婚する気はないか」なんてお父さんから言われ「もちろんです。一生幸せにします」と結ばれ、それからは「おい」なんて呼びつけて「舐めろ」とか「入れさせろ」とか言って性技をたっぷりと教え込んでいくんだ。と懲りない妄想を繰り広げるのであった。
 後日正門から堂々と入り夷隅邸へと執事が案内してくれた。その時使用人も数人見かけたが皆明らかに若かった。使用人の中に女性はおらず全員男性だったが改めて由緒ある家柄の凄さを肌身で感じた。
 玄関から大きなロビーになっていて圧倒されそうになる一太は飼い主に会う前の犬のように落ち着きがない。きょろきょろと聖子を探す仕草は挙動不審そのものだ。執事の後をついていき二階へとあがる。着いたかと思ったら通り過ぎるいくつものドアに待ちきれない想いが積み重なってきて息切れしそうなほどであった。
「こちらでございます」
 とドアの前で待たされる。
「お嬢様。真壁様がご到着でございます」
 映画やドラマの中でしか見たことのない世界が目の前にある。一太にとって途中にあったいくつもの装飾物や絵画など壁や天井の一部にしか過ぎなかった。これで聖子に会えるのだという気持ちと、既に頭の中で繰り広げられているめくるめく妄想に勃起しそうな勢いであった。
「どうぞ。お入りください」
 と中から声がすると執事がドアを開けて「ごゆっくりどうぞ」と通される。部屋の中は一太の汚い1LDKの部屋よりも遥かに広い。この部屋だけで4LDK以上にも相当する。途中には興味を示さなかった一太だが聖子の部屋となると違う。すべてが聖子の一部のような気分になってきて、床に頬ずりをしてもよいくらいになってくる。香水ではない香の香りがする。ミルクのような甘くやわらかい匂いだ。一太は先ほどから息を吸い込むために鼻息を荒くしている。聖子は屋敷にいるからといって中世ヨーロッパの姫君のような姿ではなくカジュアルな普段着だった。白いカットソーに薄紫のスカート姿でいたってシンプルだった。一太からすれば聖子のすべては輝いている。スカートから伸びるソックスへの白い素足もカットソーから見える胸元の白さも「こちらへどうぞ」と背を向けた時に見えた男の背筋をなぞりあげるような色気のうなじもたまらなくよかった。髪を頭の上で束ねている聖子はいつもとは違い大人の女の香りがする。このまま後ろから抱き着いて押し倒してしまいたいほど一太の欲望は火のように燃え上がってきている。
 一太の様子に最初から気がついていたのか、聖子は寝室までまっすぐに進んでいく。背中越しに顔を向けながら「本当は談笑などするところですが、そのご様子ですともう我慢できないようですね。お約束したこと、きちんとお守りしていただかないと、真壁様が後悔なさることになります。お破りなきようお願い申し上げます」と念を押してくる。
「約束?」と一瞬首を傾げたが「先っぽだけ」という約束だったことを思い出した。しかし我慢できるだろうか。本当に先っぽだけということはありえるのだろうか。何かの間違いで中まで入れてしまったら屋敷の者が全員駆けつけてくるとでも言うのだろうか。それよりも男一太、好きな女との約束すら守れなくてどうする。焦るな焦るな。そう言い聞かせていた。
 ベッドの前で服をするすると脱ぎだす聖子。下着もはらりと床に落ち、肉つきのよい尻と砂で削られた大理石のような滑らかさの背筋があらわになる。足のツヤも光がすべるようにすらっとしている。抜き去るように服を急いで脱ぐ一太は全裸になって近づいていく。
「もう少し、お待ちになって」
 一太を柔らかな言葉で静止させてベッドへとするりするりと足を運んでいく聖子の尻は左右にふわりと揺れて艶かしい。すっと走る尻の割れ目の奥には一太が夢にまで望んだ桃源郷がある。一太は想像するだけで雄肉をそそり立たせていた。
 ベッドの上に座った聖子はM字の足をゆっくりと開脚し、中指を割れ目に弦をなぞるように上下させている。薄毛の股奥の都は霧の晴れた峠から見渡すかのごとく、よく見える。あまり見比べたことはない一太だったが、ビデオなどに出てくる女性たちよりも毛の量が少ないせいで丸見えになっていると感じた。
 勃起した雄肉から血しぶきが勢いよく出るのではないかと思わせるほど脈打っている。
「ああ、もっとよくご覧になられてもよろしいのですよ」
 切ない吐息をもらしながら聖子は指できらびやかな門を広げていく。淡いピンク色の襞の奥はしっとりと濡れた桃の花が咲いている。一太には聖子の行為が哀れみなのか、同情なのか知る由もない。ただ妄想してきた以上のものが目の前に広がっている現実に興奮し、心臓の鼓動を打楽器のように叩き鳴らすだけであった。
 早く入れたかったが、ここはじっくりと見ておきたくもあった。
「な、舐めてもいい?」
 と聞くと「見るだけです」と言う。一太は目の前に下げられたにんじんを空腹で眺める馬のように息を荒々しく吐き出しながら、ぎりぎりまで顔を近づけて見つめた。
「ああ……」
 聖子が小さな吐息を漏らすたびにヒクヒクと桃花の肉がうごめく。小さな穴は雄の肉を締め付けたがるかのようにきゅっと時折締まる。一太の息がかかるたびに聖子の体にくっと力が入り乳首がぷくりと盛り上がってくる。雄に敏感な体は目の前の痴態を喜ぶように鳥肌を立たせていた。
 そのうち聖子のひくつく肉の奥から白い液が垂れてくる。見られて感じているのだと一太は思い出すと、中を貫きたい衝動が止まらなくなる。
「は、早く入れたいです」
 と一太の言葉に「ダメです。先端だけとのお約束でございましょう。守っていただかないと大変なことになります」とたしなめる聖子。
「大変なことになる」とはどういうことだろう。気にせず奥までガシガシ突いてやればきっと感じて自分になびいてくるに決まっている、という悪魔のささやきと大戦争を繰り返していた。しかし、そこは押しの弱い一太。ここはしっかりと約束を守れる男らしさを見せるんだ、と奮起して自らの雄肉を聖子の花びらへとあてがった。
 いざとなると困ることがあった「先端」とは、どこまでのことを指しているのか。亀頭はすべて入れていいのだろうか、それとも許されないのか。興奮しきって息苦しささえ覚える一太はあてがいながら悶えた。入れる前から悶えっぱなしの一太は細心の注意を払いながら雄肉を押し込んでいく。先端が少しだけ埋まっていく。聖子の肉の感触が少しだけ伝わってきて、一気に包み込んで欲しくなる。
「ああ、もうそこまでになさって」
 と聖子に言われた時にはカリ首にまでは届いていなかった。三分の二ほど聖子の中へ入り込んだ亀頭は力加減ひとつで中へと入っていってしまう。分娩する妊婦のように呼吸しながら荒れ狂った気持ちを落ち着ける。すべて入れてしまっては約束したことが水の泡になる。しかしこの状態ではどうしようもない。先端に伝わる聖子の肉の温度と感触を妄想で雄肉全体に広げて補っていこうと修行僧のように瞑想、否妄想の中へと深く入り込んでいった。
 一太の試みが続いたのは、ほんの数秒でしかなかった。聖子は一太の様子を見ながら顔を赤らめ瞳を潤ませて肌にうっすらと汗を浮かばせている。そのせいか一太の鼻を隠微な香りがくすぐり、肌の怪しくうねるような艶が目の奥にまで飛び込んでくる。聖子の花びらに埋められた先端はうごめく肉によって締め付けられているのがわかる。
「くっ……」
 これでは「絶対押すな」と書いてある押しボタンを目の前にしているようなものだった。歯を食いしばり、耐えろ、耐えるんだとはち切れそうな雄肉の欲望を抑え込む。もはや拷問だと言っていい。普通の男なら耐えられそうもない状態を必死に耐えようとする一太の想いは本物だった。一太が雄肉をビクンとさせると「あん」と小さく声を上げる聖子。
 聖子のいやらしい声が針となって欲望の風船を危なげになぞっていく。脳内は欲望で破裂しかかっていた。だめだ。これでは欲望に負けてしまう。約束を守るんだ。そうだ、何か話をすれば気がまぎれるはずだ。そう思った時、以前青のエキノプスだけを手折っていたことを思い出した。
「あの、どうして青のエキノプスだけを手折っていたのですか?」
 一太の言葉に明らかに悲しげな目の色に変わったのを見た。
「あれは、思い出すのです。子供たちのことを……」
「子供たち?」
 誰の子供だろう。「子供たち」というからには聖子のことだとは考えがたい。
「はい。詳しいことは申し上げられないのです。お父様から堅く口止めされておりますので」
 父親から口止めされているということは、愛人の子供たちということだろうか。悲しい思い出なのなら無理に掘り返すことはない。この場には似つかわしくない、ドロついた話なのだろうと判断した一太は、それ以上聞くことを止めた。
「はあん。ああ、入り込んできております。いけませ、あん」
 と聖子が声をあげる。思わず力が入って聖子の奥へと入り込んでいたようだ。じっとしているのももどかしくなってくる。せめて少しだけでも動きたいものだ。だが先端だけを出し入れするのも難しい。欲望は膨れ上がるだけでしぼむことはない。「ふう、ふう」と震えるように腰を動かしてみたが先端だけでは快感を得ることはできない。
 聖子は雄肉の振動に「くああん」と押し殺した声をあげ、ビクっと体を震わせた。だんだんと一太の欲望は理性を腐食させていく。なぜ自分がこうしていなければいけないのかわからなくなってきていた。もう先っぽだけ入れているじゃないか。先っぽも全部も変わらない。それよりか、全部入れたほうが気持ちいいじゃないか。聖子だって先っぽだけでこれほど感じている。全部入れて子宮の奥までかき回して肉を散らせた時の聖子の逝った顔はどんなのだろう。一度欲望の好奇心がむくりと顔をもたげると、堰を切ったように流れ出してきた。
 もはや一太ダム決壊間近と言っていい。ひびが入り込み、水漏れは既に始まっている。それよりも先端だけ入れた雄肉の先からは我慢した汁が放水されているだろう。白濁した欲望の液を聖子の肉の奥まで噴出させてやりたい。ぴっちりと張った乳房にむしゃぶりついて腰を思う存分ふって雄肉に牝の花を味あわせてやりたい。
 ダメだダメだと頭を抱えて前のめりに手をついた時、雄肉はぐっと聖子の中へと入り込んでいってしまった。その瞬間、一気に射精してしまいそうなほどの快楽が全身を襲ってきた。
 聖子の牝肉は待ち焦がれていたかのように波を打って雄肉にまとわりついて絞り上げてくる。
「くあああん。ああ、いや。お止めになって。早く抜いてください。お願、ああん」
 名器のような聖子のうごめきに一太は快楽に震え上がった。体をのけぞらせて汗を散らせるかのように感じ、髪をいやいやと振り乱している姿は欲望をさらに誘い出し、女の肉を支配しつくし味わってやりたいと思わせるには過剰なほどだった。
 一太ダムは決壊し盛り上がった欲望の濁流が理性という名の街を根こそぎ呑み込んでいくようだった。聖子の腰をがっちりと掴んだ一太は雄肉を深々と聖子の肉の奥へと埋めるために自らの腰を打ち付けている。粘液のくちゅくちゅとした音や男の袋が打ちつけられるペチリペチリという音を聖子は耳にしながら貫かれる肉の奥に注ぎ込まれる洪水のような快楽に頭を白くさせて喘いでいた。
 もう一太の頭の中には「約束」の欠片すら残っていなかった。快楽に鳥肌すら立ってくる。脳の中がじわりとあふれ返った快楽に痺れてくるようだった。まるで聖子の肉汁が牝肉からあふれるごとに媚薬を注ぎ込まれているかのように。
自分のすべてを注ぎ込みたいという衝動は止まらなかった。もう頭は聖子の肉の奥へ欲望の液を叩きつけることしかなかった。何度も貫かれ揺れる聖子は自らの乳房を揉みしだいてより快楽を貪っている。「ダメ、逝きそう。逝きそうです」と訴える隠微な聖子の姿に思わず一太は射精した。ドクリドクリと止まることを知らない精液のほとばしりは至福の時を迎え天界を解放したかのような高揚感だった。一太の意識はゆっくりと薄らいで白い光の中へと包み込まれた。
 一太の姿は次の瞬間なかった。少しだけお腹の膨らんだ聖子が、まだ逝った余韻に体を震わせているだけだった。
 ノックもせずに男が聖子の寝室へ入ってくる。夷隅博志の姿だった。
「お父様……」
 博志は聖子を見つめたまま何も言わない。何が起こったのかすべてわかっていた。ため息をひとつついて聖子に聞いた。
「またやってしまったのか。今度の人間は優秀なのか。使用人ばかり増えてもしょうがない。優れた遺伝子を残せなければな」
「申し訳ございませんお父様。堅くお約束しましたしきちんと守ってくださったのですが。人は弱いものですね」
「ふん」と鼻で笑い博志は部屋を出て行く。「うう」とうなって力を入れる聖子の桃花の割れ目からは大きな種がどろりと出てきた。
「真壁さん。約束をお破りになるなんて酷いです。でもこれからは生まれ変わるのです。また小さな赤子から人生が始まるのです。花をつけ、実をつけ、生れ落ちます。あなたはどんな花を咲かせるのでしょうね。でも、きちんと育ってくださらないと、お父様に嫌われてしまいます。嫌われて温室の植物たちに食べられてしまわないよう、しっかりと、育っていってくださいね」
 少し悲しげな瞳を向けながら聖子は種が大きなエキノプスのような花を咲かせることを思い浮かべていた。



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やはり、こちらに。

 がっかりしていたのですが、こちらで読むことが出来て、嬉しい限りです。
 これはもう一太の妄想パラダイスの世界ですが、妄想の中だからこそかなえることのできる欲望も欲しいままにできるのでしょう。
 いかにも深窓の令嬢といった感じの聖子の、あられもない肢体とあえぎ声をに驚きながら、かのじょをしることのできた一太は、さて幸福を掴むことができるのしょうか?
 ドキドキしながら、さらなる展開をたのしみにしております。

Re: やはり、こちらに。

どうにもアメーバブログでは限界があるようで。
途中でバッサリ削除されては読むほうも大変でしょうからこちらにしました。
実はここに載せている分で一応完結です。
続きありそうですけどね。
続きを書くとしたらアナザーストーリーになりますね。
こちらにもご丁寧にコメントありがとうございました。
プロフィール
ランキング応援してね。

貴美月カムイ

Author:貴美月カムイ
性別:♂

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